アルマの行方を追い、各地を奔走するラムザ。しかし、その行く手を阻むのは、人智を超えた存在「ルカヴィ」へと姿を変えたかつての権力者たちでした。
エルムドア侯、そして実兄ダイスダーグ。聖石の力に溺れた者たちが次々と倒れ、名門ベオルブ家の誇りもまた、骨肉の争いの果てに瓦解します。一方で、親友ディリータも自らの野心を成就させるべく、真の目的を剥き出しにし始めました。
事態はついに最終局面へ。教皇フューネラルを暗殺したヴォルマルフは、死都ミュロンドの扉を開く「鍵」であるゲルモニーク聖典をラムザから奪い去ります。命尽き果てる間際の教皇から、入り口がオーボンヌ修道院にあることを告げられたラムザ。妹の救出、そして世界の破滅を阻止するため、すべての因縁が始まった地・オーボンヌへと最後の戦いに赴きます。
ヴォルマルフを追ってオーボンヌ修道院へ
ラムザたちは、ヴォルマルフを追ってオーボンヌ修道院の地下書庫を下ります。最奥に控えていた神殿騎士ローファルがラムザたちを迎え打とうとしますが、やはり力及びません。傷ついたローファルは、ゲルモニーク聖典に記されていた古代の魔法を発動します。すると、床に魔法陣が浮かび上がり、ラムザたちは転送されてしまいます。

死都ミュロンドへの転送
ラムザたちと共に転送されたローファルは、ここが「死都ミュロンド」なのだと言います。そして、最後の力を振り絞り、転送装置である魔法陣を破壊します。帰路を封じ、役目を果たしたローファルは力尽きます。

死の間際、脳裏にヴォルマルフへの疑念がよぎります。しかし、信仰に殉じてきた彼の人生はそれを許しませんでした。自分が選び取れなかった可能性をラムザに託すと、ローファルは息絶えます。

死都ミュロンドを進むラムザたちを、神殿騎士クレティアンが迎え撃ちます。クレティアンは、「聖天使の加護を得た聖アジョラ」が復活すれば、聖石を新たに生み出すことができ、それが民の救済になると言います。ラムザは、アジョラはただの人間に過ぎないと訴えますが、クレティアンは聞く耳を持ちません。

「聖天使」とは何か、復活とはどういうことか、ラムザには何もかもが理解不能です。彼もまた、信仰心をヴォルマルフに利用されただけの人間でした。ラムザたちはこれを退け、先に進みます。

血塗られた聖天使の復活
一方ヴォルマルフは、アルマを使って「聖天使と融合したアジョラ」なるものを復活させようとしていました。ヴォルマルフはその魂の居場所を感じ、アルマを連れてきていたのです。しかし、そこにあるはずの魂は、アルマに憑依しようとしません。

これまで聖石の力でルカヴィとなった者たちは、元の人格を反映し、記憶を継承していました。それは憑依というより、融合と言えます。それらと同様に、はるか昔にまだ人間だったアジョラが、聖石の力で「聖天使アルテマ」という名のルカヴィになったとすれば、その魂はまさに「聖天使と融合したアジョラの魂」と言えます。

そこにラムザたちが現れます。ヴォルマルフは、アジョラの死後、千年以上もの戦乱を経て流れた多くの血は、その復活に必要なものだったといいます。それはすなわち「血塗られた聖天使」だと言います。

ヴォルマルフは聖石の力で「統制者ハシュマリム」に姿を変え、ラムザに襲いかかります。ハシュマリムは、ラムザたちの強さの源もまた聖石の力だと言います。それはルカヴィたちにとって、障害となる力でした。

かつてマラークの命を救ったのも、聖石の力でした。聖石の力をルカヴィ化以外に使用されれば、彼らの思惑通りにはいかなくなります。

アルマの無事を確認するラムザに、ハシュマリムはその肉体の貴重さを訴えます。聖アジョラが没したのは数十世紀前と言われています。ルカヴィたちが悠久の時の中でその復活を望んでいたとすれば、それに必要なアルマの肉体が今になって現れたことは、奇跡的なことだったと言えます。

十数世紀もの昔、聖石ヴァルゴを介してルカヴィ化したアジョラは、何らかの理由で倒され、死都ミュロンドに魂を拘束されていました。そのため、聖石と肉体だけではルカヴィ化することができず、その魂の存在する「死都ミュロンド」まで依代を連れてくる必要があったのです。また、その依代には「完全な適性」が必要であり、それをもつ者がアルマでした。

ラムザたちに追い詰められたハシュマリムは、自らの命を犠牲にし、その血を以て「血塗られた聖天使」を復活させようとします。

ハシュマリムが倒れたその時、聖石ヴァルゴが輝き、アルマの体を包み込みます。

魂の憑依は成功し、アルマはアジョラとなります。ハシュマリムの宿願は成就したのでした。

しかしアジョラは、アルマの魂の抵抗により融合しきれず、吐き出してしまいます。

苦しむアジョラは、アルマとの完全な融合を諦め、強引にルカヴィ化して「聖天使アルテマ」となります。「多くの血」、「完全な適性を持つ肉体」、「死都ミュロンド」…顕現に厳しい条件を必要とする「聖天使アルテマ」は、明らかに他のルカヴィとは異質な存在のようでした。

アルテマは、自身を神だと主張します。かつて神殿騎士たちは、聖アジョラは聖石を自由に創り出すことができる特別な存在だと言っていました。

世の不条理に対する尽きることがない不満は、力への欲望に姿を変えていきます。その欲望は、聖石の数だけルカヴィを生み出し、彼らの仲間を増やしていくことになります。人間が不条理に抗うことを諦め、力に逃げ場を求めることは、同時にルカヴィによる力の支配を受け入れることとなるのです。

復活したばかりであるのに加え、不完全な融合状態でルカヴィ化したアルテマは、ラムザに追い詰められます。そしてその相手が、かつて自分を倒した者の末裔であることを感じとると、アルテマは姿を変え、最後の力で襲いかかります。しかし、もはやラムザの敵ではありませんでした。

アルテマが倒れると、その体は大爆発を起こします。閃光に包まれるラムザは、その刹那、自身の持つ聖石に願いを込めます。

ラムザの願いに聖石が応えたのか、ラムザたちは無事に死都ミュロンドを脱出し、地上に戻ることができました。しかし、異端者の烙印を押され、もはや普通の生活に戻ることはできません。
しかし、ラムザを縛る全ての鎖は解き放たれました。貴族も平民もない、ただ一人のベオルブとなったのです。自由を得たラムザは、アルマと二人で旅に出でます。その後、二人の姿を見たものはいませんでした──。
全てを終えて
ルカヴィの存在や教会の陰謀は、世に知られることはありませんでした。ラムザたちが何を成したのかを知るものは、彼と行動を共にした者たち以外にはおらず、ラムザとアルマは死んだこととして処理されました。

オーランは、バルマウフラと共にラムザの墓を訪れます。彼は、ディリータがオヴェリアと結婚し、新たなイヴァリースの王となったと報告します。この英雄譚の真実を知るオーランには、その裏で戦ったラムザに対するただならぬ思いがありました。彼もまた、陰謀の渦中でもがき続けてきた一人だからです。

ラムザたちの死に実感を持てないオーランは、突然目の前を通り過ぎるラムザとアルマを目撃します。すぐに呼び止めようとしますが、二人はそのまま姿を消してしまいました。彼が生きていることを知ったオーランは、何の見返りもなく戦い、表舞台から去ったラムザに感謝するだけでした。

真実を記した「デュライ白書」
オーランはそのラムザの姿に、生きることの意味を問います。そして、ラムザこそが真の勇者だと感じていました。彼は、これまで自分が見聞きした真実を「デュライ白書」という本にまとめて公表します。しかし真相を怖れた教会は、オーランを火刑に処し、デュライ白書を禁書として隠匿してしまいます。

隠匿された「デュライ白書」は、400年後、オーランの子孫である「アラズラム・J・D・デュライ」によって公開されることとなりました。

ディリータが得たもの
ディリータの物語は輝かしいものでした。それがどんなに血塗れであったとしても、結果として既得権益者の権力闘争からイヴァリースを救ったのです。平民から王になった彼の姿は、貴族社会の犠牲になった罪なき民たちの救いになったでしょう。そして何より、念願であったオヴェリアを妃に迎えることができました。彼は全てを手に入れたのです。彼女の心以外は…。

ディリータは、一体何を得たのでしょうか。
物語はこれで終わりです。長々と読んでくださった方は大変お疲れ様でした。記事では構成の問題で多くの部分をカットしていますので、もしまだゲームに触れていない方がいれば、ぜひ実際にプレイしてみてください。この作品が、できるだけ多くの人の心に残ることを祈ります。
