2022年の模コン(吉本プラモデル部のYoutubeチャンネル)に応募した、ディードリットの模型です。せっかくなのでここで供養してあげようと思います! 制作過程をろくに撮影していなかったこともあって、日記のようになってしまいましたが、初心者でも根気があればデキるということだけは伝わると思います。
コンペでの戦い方を模索する
コロナ騒ぎの影響で家で楽しめる趣味に注目が集まり、どこにでも売っていたガンプラが棚から姿を消しました。皆がYoutubeを見始め、一気に世界が変わったなという印象でしたね。フリーランスになったこともあり、私もプラモデルをチマチマと作っていましたが、一念発起してコンペに出そうと考えました。しかし、数年前から始めた程度の腕では、歴戦の猛者に挑めるわけもありません。そこで、なんとか対抗する手段として、石粉粘土での作成を選びました。

New Fando
これはNewFandoという、石粉粘土です。汚い写真で申し訳ないですが、実際使っていたものです。乾くと石膏のように硬くなりますが、ある程度の弾力性もあるため、意外と頑丈です。乾いてきても水を足せばに復活するので、長持ちしますよ。価格がお手頃で、失敗を恐れず作れるのも嬉しいところ。初心者にはうってつけの素材です!
粘土を買ってみたはいいものの、石粉粘土どころか、ジオラマのようなものも作ったことがないガチの初心者だったので、行き当たりばったりの作成となりました。ただ、モチーフは女性にしようと考えていました。男性のモチーフは、筋肉や骨格など、人体の構造を勉強しなければ、説得力ある造形にならないためです。
ディードリットをモチーフに
ディードリットは、ロードス島戦記という小説に登場するキャラクターです。今のアニメや漫画に登場する、典型的なエルフの始祖的存在ですね。初出はおそらく小説の表紙と挿絵です。そのためか、各媒体の特性や判断によって、比較的自由な解釈がなされていたと思います。私にとっては、この「解釈のふところが広い」という点は重要でした。
モチーフが「人物である」という点も重要でした。人であれば、髪は伸びるし服は着替えるでしょう。いつも鎧を着て歩いているわけでもありません。イラストと異なった服をきていても、違う髪型であっても、設定的な矛盾はありません。ましてや、ディードリットはハイエルフという1000年以上生きる種族という設定です。1000年以上の寿命ともなると、物語で描かれているのはほんの一瞬にすぎません。世に出ていない多くの部分が、彼女の生活だと考えても不自然ではないでしょう。これは表現の幅などという高尚な話ではなく、「私の技術力で作れないものを回避する」もっともらしい理由にできるということでもありました。
とりあえず素体を作る

すみません、制作過程のほんとどを撮影していませんでした。突然出来上がった感じで申し訳ないのですが、ひたすら削って盛ってを繰り返した感じです。大まかな形を作ったら、ナイフややすりで少しずつ形を整えてきます。粘土の表面はボコボコしているので、それを滑らかな面に整えてあげます。人体などの有機的なラインはスポンジヤスリがオススメですが、私はほとんど「神ヤス」で仕上げました。プラモでもよくお世話になっています。
目詰まりしづらく、洗えば繰り返し使えるのが良いですね!曲面への追従性がありつつ、狙った部分を削りやすいので、とても汎用性が高いです。スポンジの厚みと番手でラインナップが分かれていますが、個人的には1〜3mmが使いやすいです。
薄い方が細かいところに当て易く、厚い方が広い面を削りやすいという印象です。プラモだと#240〜#1000をよく使いますが、粘土相手なので#120から徐々に番手を上げていき、#800あたりまでかけました
ディティールの作成

服の装飾などは、細くこねて紐状にした粘土を体に這わせるように付け、その後ヤスリで平らにすることで表現しています。Fandoは水に濡らせば溶けてきますので、接着も簡単です。
服のシワなどは、盛ったり削ったり…ホントそれだけですね! 細かい部分は、普通の紙ヤスリを小さく切ったものや、ナイフ状のヤスリのほうが作業がしやすいです。

GOKEI ダイヤモンドヤスリ 精密ヤスリ
一般的なデザインナイフの形をしたダイヤモンドヤスリです。似たような商品は色々ありますが、最適なヤスリの形状や粒度は、作るものや削りたい場所によって変わってきます。これなら色々セットになっているので、自分に合ったものを探しやすかったです。
塗装の工程を考慮し、ノコギリでバラバラにします。使用するノコギリはできるだけ薄いものを選びます。カット部分はどうしても一定量欠損してしまうので、被害をできるだけ少なくするためです。カットできたら、断面に四角い凹凸のダボを作って、角度や位置を正しい位置に戻せるようにしてあります。初心者だったので適当でしたが、Faondoは硬化後かなり縮むので、ダボはプラ棒などの別素材で作った方が良いです。


GSIクレオス Gツール Mr.モデリングソー
ホビー用ノコはたくさん種類があるのですが、私はだいたいコレを使っています。ホビー用だけあって刃は薄く、傷んだ際には交換できるという点が気に入ってます。背金おかげでヨレないのも良い点ですが、逆に材料を完全に貫通させるような切り方はできないので注意です。
ひとまず素体ができたので、撮影してphotoshopでイメージを固めていきます(順序が逆ですね)。当初は額縁ジオラマにしようとしていましたが、物理的な制限により方針転換することになりました。額縁ジオラマはメジャーな表現方法なのですが、水の表現にレジンを使うことを考えた時、初心者の私では技術的に無理だろうと判断しました。いつかはやってみたいですね。

ジオラマを作る
何かに座っているシチュエーションにすることは決めていたものの、額縁のアイディアを破棄したので、どうすべきか悩んでいました。とにかく必要なのは、「このポーズで座れる場所」ということです。先に作ってしまったフィギュアに合わせられるよう、土台は樹木にしました。樹木なら、枝ぶりを自由に調整して台座が作れると考えたためです。エルフは森の生き物ですし、彼女の寿命からすれば、人間よりも木のほうが愛着があるかもしれませんしね。

木の支柱は針金に銀紙を巻いたもので、形を整えた後にFandoで肉付けしています。なかなか思い通りにいきませんでしたが、何度でもやりなおせるのが良いところです。本体がグレーになっているのは、サーフェイサーという下地塗料を塗布しているためです。粘土の上から直接塗装するのはさすがにキビシイですので。髪は後から取り外しができるよう、サーフェイサーを塗布した頭蓋上からFandoで盛り付けています。Fandoとサーフェイサーの塗膜はくっつかないので、乾いたあとに取り外しできます。

Mr.サーフェイサー1000 ビンタイプ40ml
サーフェイサーは下地塗料で、塗装の際、塗料の食いつきをよくしたり、微細な隙間を埋めてくれます。私が使ったのはビンタイプですが、缶スプレーのタイプも同じです。水性塗料を使う場合は、水性塗料用のものを使う方がよいでしょう。1000という数字は粒子の粗さを表すもので、他にも1200や500などがあります。

水中から生えている樹木という設定にしました。初期のイメージに寄せていく感じですね。フィギュアを先に作ってしまったので、土台の大きさは成り行きです。思ったより大きく、37cmにもなってしまいました。いや、デカすぎた。
水色の部分は、スチレンボードという断熱材の板で、ホームセンターなどで売っています。スチロールカッターを使えば、自由にに切ることができます。

撮影時、画角に対してどのように背景が映り込むのかという点を考えながら、レイアウトしていきます。作りながら感じたことは、とにかく「高さ」が重要だということ。平坦な位置にフィギュアを配置しているだけだと、全体に立体化がなく、見栄えが良くないと感じました。そのため、岩場を作って高さを稼ぎます。地面にならべているのは、ごく普通の発泡スチロールを、普通のカッターで削ったものです。ゴロゴロ岩ですね。

土台は強度が必要だったので、木の板にしました。水の表現に使用するエポキシレジンが、かなりの重さになることがわかったので、板の裏はキャンバスのように角材で補強してあります。葉はプリザーブドプランツといって、特殊な液体を吸わせることで長期間保つように加工されたものです。瞬間接着剤で根気よくつけていきました。

木はアクリル絵の具で着色しています。赤、青、黄の3色を重ねるように塗ります。細かいことは気にせず、筆で叩くように色を乗せていきます。アクリル絵の具は隠蔽力が弱く、下地が透けるので、3原色を重ねていけばやがて茶色や黒になります。複雑な色を簡単に表現できてラクチンです。
樹木の根っこにはクリスタルを配置しました。ファンタジー感を出したかったのと、コンペで少しでも印象を残すためです。このクリスタルはセリアで売っていた小物です。下から点灯させるつもりだったので、粘土と銀紙で遮光してあります。

水底を作っていきます。岩も木と同様に着色し、草や砂利(ダイソー)、バークチップ(観葉植物を装飾するもの)を散らし、リアルな感じにしていきます。砂利はイメージより白かったので、シャバシャバに解いたアクリル絵の具にどぶ漬けしました。位置が決まったら、水で解いた木工ボンドをスポイドで隙間に垂らし、全体を固めます。

最後にジオラマ用の草を植えて完成!これもしっかり接着します。あとはエポキシレジンで水を作るのみ…。ここで失敗すれば全て水の泡。勇気がでなくて2週間くらい放置してました。

お魚でも作るか…。ということで、100円ショップで樹脂粘土を買ってきて適当にペタペタ。塗装は全てアクリル絵の具です。水底に透明なプラ棒を刺し、浮かせた位置に配置しておけば、水中を泳いでるイメージになるのではないかと。
フィギュアを着色して、水辺を作る
放置されれていた本体を着色していきます。サーフェイサーで下地を塗っていたので、あとはラッカー塗料とエアブラシで塗装するのみ。肌の塗装は初めてだったので、かなり苦戦しました。難しすぎて一生上手くなる気がしません。

体の塗装はマスキングしてエアブラシするだけなので、そこまで苦戦しませんでした。ただ、目を塗るのは本当に心臓に悪いです。できれば2度とやりたくないです。老眼がきついです。
そしてついにレジンを流す日がやってきました。外周をプラ板で囲い、漏れ出さないよう目張りしてガチガチに固めます。レジンの量を慎重に計量し、化学反応の熱や収縮によって内部が破壊されないよう、数回に分けて流し込みます。

フローレスレジン(エポキシレジン)
最近流行りのUVレジン(紫外線による硬化)ではなく、2液混合型による化学反応で硬化するエポキシレジンです。大量に使うに場合はこちらの方がメジャーだと思います。初めてだったことありますが、レジンにはいろんな商品があり、選び方が難しかったです。今でも何が良いのかよくわかりませんが、この作品に使ったレジンということで紹介しておきます。結構お高く、扱いが難しいのが難点ですが、美しい透明感が出せます。

必死すぎて何も撮影してなかったです。色々失敗しているのですが、これ以上やれることもありません。レジンを流し込んでツルツルになった水面に、KATOの大波小波(水面を表現するためのアイテム)を塗布します。ドロッとした透明の糊のようなもので、ヘラで表情を付けることができます。初体験かつ一発勝負というプレッシャーがすごかったです。というか、水に色をつけすぎて地面がが見えないという…魚どこいった! まぁいっか。

KATO 波音・大波小波
KATOという鉄道模型関連のメジャーなメーカーで、ジオラマ系の素材も多く取り扱っています。波音や大波小波は、ウォーターシステムという水景ジオラマの商品群の一つで、初心者でも安心して使用できます。一般的に水面の表現には、木工ボンドなど乾くと透明になるものが使用されます。それをより簡単に扱えるようにしたのが、大波小波ですね。波音はレジンに色をつけるための着色料です。私は見事に入れ過ぎてしまいましたが、綺麗なターコイズブルーが表現できますよ。
ようやく完成

最後に鳥(建築模型用)を乗せて完成!
底面からLED(ダイソーで売ってるやつ)を仕込んで点灯させてます。色々大変でしたが、なんとか気合いで完走したという感じでしたね。とにかくレジンの扱いには気を使いました。作品を一発で台無しにしかねない上に、値段が高くて失敗できないです(Fandoは数百円だというのに…)。とはいえ、他に変えられない質感がありますから、水の表現にはぜひ使っていきたいです。
NewFandoについて
冒頭でもお伝えしましたが、NewFandoは造形初心者に優しい優れた粘土だと感じました。下記に私が感じた特徴や使い勝手をまとめました。弱点もありますが、それを補ってあまりある性能です。とにかく手軽なのがいいですね。ぜひ使ってみてください。
というわけで、おおよそ10ヶ月に渡った制作をまとめてみました。記事を描いていていると、当時の苦労を色々思い出しますね。コンペ用ということで随分背伸びをした感じでしたが、得るものも多かったです。これは2022年の作品ですが、2024年に次回作も作りました。また改めて記事にしたいと思います。
最後まで見てくださった皆様、本当にありがとうございました。
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