塗装ブースの選び方

Modeling

私はほとんどの模型を自宅のエラブラシで塗装しています。しかし、これは幸運なことで、普通に考えてエアブラシを使用できるような環境を自宅に持つことは難しいと言わざるを得ません。とはいえ、近年ではかなりコンパクトにエアブラシ塗装の環境が作れるようになってきており、敷居は下がってきています。ここでは、特に塗装ブースについて、私の経験を踏まえたポイントを紹介してききたいと思います。


塗装ブースは大きい方がいい

おおまかに言ってしまうと、大きい塗装ブースの方が吸引力が高く、ブース外への被害も少なく済みます。しかし、自宅の環境ではスペースも限られていますし、使用頻度がわからないものへの投資は最小限に抑えたいと考えるのが普通です。
私がよく行くモデリングスペースには、「ネロブース」が設置されています。大きく無骨ですが、吸引力は圧倒的で、匂いを感じることがほとんどありません。現在は「ネロブースmini」というコンパクト版が販売されていますが、やはり比較的高価な商品です。

ネロブースmini

【ガットワークス】W200×D200×H210mm



NITRO-BOOTHはネロブースより若干安価で、大きさのバリエーションも豊富です。もしこれらを設置できるなら、あまり悩むことなくエアブラシ塗装の環境を構築できるでしょう。しかし、スペースや予算との兼ね合いを模索したいなら、以降に紹介するいくつかの要素をヒントにしていただければと思います。

NITRO-BOOTH 450

【PROFIX】350(幅350mm)、550(幅550mm)のラインナップ有



吸引力と噴射圧の関係

基本的に塗装ブースの吸引力は強い方が良いですが、その理由のひとつが噴射圧の許容範囲が広いという点です。当然ですが、噴霧の勢いが強すぎると、それが吸引力を上回って拡散してしまいます。そのため、吸引力の弱いブースは、噴射圧の高いコンプレッサーや缶スプレーなどの使用にあまり向いていません。しかし、エアブラシ塗装において、コンプレッサーの圧力や空気流量は多い方が有利なのも事実です。この相反する条件の折り合いをつけるというのが、塗装環境選びのポイントになってきます。



可搬性と収納性

塗装頻度が高くない場合、不要な時は収納したいと考えるのが普通です。塗装ブースの中には、折りたたんでコンパクトにできるモノもあります。ただ、エアブラシ塗装をするにはコンプレッサーの配線やダクトの設置も伴うため、使い終える度に収納するというのは中々面倒です。机の上で折りたたんで置いておくという使い方なら、手間もかからず机の上のスペースは確保しやすくなります。

下記は私が過去に使用していた塗装ブースで、記事作成時点でも販売していたので紹介しておきます。不要な時には畳んでおける点は便利で、初心者にやさしい価格です。吸引力にそこまで不満はありませんでしたが、音は割と大きいです。

スプレーブースセット エアーブラシシステム スプレーワーク ペインティングブース エアブラシ用 排気ダクト付き塗装ブース

【Ausuc】



省スペース性

スペースは確保したいが、都度収納したり配線しなおしたりするのは面倒という場合には、そもそもがコンパクトな商品を選ぶという手もあります。私はこの方向性でGSIクレオスの「Mr.スーパーブース・コンパクト」を使用しています。現状存在する塗装ブースの中で、最も省スペースだと思います。
囲いがなく、一般的な塗装ブースと比べて吸引力が弱めなため、ファンの部分に目掛けて噴射することが前提になります。しかしその分、圧倒的に省スペースで設置できるという利点があります。個人的な使用感で言えば、HG程度の塗装であれば問題なく使用できます。

Mr.スーパーブース コンパクト

【GSI クレオス】



排気が鬼門

いかに塗装ブースがコンパクトであっても、排気は必要になってきます。おそらく、多くの環境でこれが最も大きな障害となるでしょう。排気ダクトは案外太く、取り回すのも一苦労です。そのため、多くの場合は窓際に設置し、窓を少し開けて排気するという方法になるでしょう。

私は窓を半開きにして、網戸越しに排気をしています。冷暖房効率を考えると可能な限り窓は開けたくないですし、夏は虫が入ると困るので、このようにしています。

フィルターやダクトを介しても、やはり少しだけ網戸に顔料が付着してしまいます。ただ、排気が網戸に届く頃には揮発しているので、軽く拭いてやるだけでキレイになります。


静音性

コンプレッサーと同様、塗装ブースも騒音を発します。塗装ブースの騒音の原因はファンですが、これにはプロペラ型とシロッコ型のファンの2種類があります。端的にどちらが性能が高いと言いづらいですが、静音性に関してはにシロッコファンの方が優れています。

塗装ブースがどのタイプのファンを使用しているかは、購入時の目安になります。また、実用においてはコンプレッサーの騒音も加わるため、静かさにこだわるなら、コンプレッサーの騒音にも気を配る必要があります。


臭気について

ラッカー系塗料を使う場合、どうしてもある程度の臭気は発生してしまいます。これは、噴霧時はもちろん、塗料をカップに移したり、エアブラシを洗浄するためにどうしてもシンナーを使用するためです。吸引力が高いものであれば臭気ごと排気してくれるためあまり気になりませんが、そうでない場合は限界があります。

Mr.スーパーブース・コンパクトは吸引力がそこまで強くないこともあり、ある程度の臭気は発生します。吸引口の近くで塗料やシンナーを扱えば臭気もかなり抑えることができますが、塗装を続ければやはり換気は必要になります。これは家庭用の塗装ブースの多くが同様だと思います。


水性塗料も一考する

臭気がどうしても気になる場合、水性塗料をメインで使用するという選択肢もあります。個人的には、多くの場合でラッカー塗料の方が塗装しやすいと感じます。ただ、これは単純に製品規模や技術の積み上げの差とも言えますから、いずれは肩を並べることになるだろうと思います。

現状、水性塗料は大きく分けて2種類存在します。両者ともアクリル樹脂自体が持つ接着力を利用しているのは共通していますが、溶剤による多少のプラスチックの溶解を伴うのがAQUEOUS(水性ホビーカラー)、アンカー効果(物理的なひっかかり)に依存しているのがACRYSIONです。後者はエマルジョン系と呼ばれ、シタデルカラーやファレホなども該当します。AQUEOUS(水性ホビーカラー)はラッカー系と似た構造と言えます。

アンカー効果とは、塗布した面に対してひっかかりを作り、物理的に定着させるというものです。両者は普通に塗装する分にはそれほど差はないと言えますが、その性質上、薄い塗膜を作りづらい傾向があります。また、極端に希釈すると、水の表面張力に負けて顔料がうまく乗らないということも起きます。


水性塗料の方が清掃に手間がかかる?

模型用の水性塗料は乾くと耐水性になるため、水で拭き取ることができなくなります。それでも、マジックリンや専用のクリーナーを使えば簡単に塗膜を落とすことができるため、ラッカー系よりは掃除が楽です。しかし、エアブラシの清掃に関しては、必ずしもそうとも限りません。その理由は、エアブラシの構造にあります。

塗料はエアブラシの内部に一旦充填され、圧力をかけられることで噴霧されます。つまり、ニードルは塗料に浸かっているような状態になります。ラッカー系の場合、固まってしまた塗料を有機溶剤で液体に戻すことができるため、いわゆる「うがい」だけで事足りることがほとんどです。

しかし水性塗料が内部で固まってしまった場合、塗膜を溶かすことができないため、何らかの方法で「剥がす」必要があります。これは「うがい」だけではなかなか難しく、場合によっては分解清掃が必要になってきます。また、仮に「うがい」で剥がせても、それらは塗膜のカケラとなり液中を漂うことになるため、エアブラシを詰まらせる原因にもなりますので、やはり「うがい」だけで完結させることは難しくなります。水性塗料をエアブラシで使うコツは、とにかく乾かないうちに清掃するということに尽きます。


設置する机は「汚れ」を前提に選ぶ

塗装をしていれば、どんなに気をつけてもある程度汚れてしまいます。エアブラシのカップから溢れてしまうこともあれば、塗料を混ぜているときに手を滑らしてしまうこともあります。ラッカー系塗料の場合はツールクリーナーなどで拭き取ることになりますが、この際、机がラッカー溶剤に弱い塗装がされていないかは注意してください。ニスでコートされていたり、ペンキで塗装されているようなものだと、それらを侵食してしまう可能性があります。また、剥き出しの木目やザラつきのあるものも、拭き取りづらいので避けた方が無難です。

私はサンワダイレクトのPCデスクを塗装用として使用しています。有機溶剤で侵食される部分がなく、黒なら汚れも目立ちづらいです。また、パソコンデスクなだけあって、コンプレッサーや塗装ブースなどに必要な配線の取り回しが楽なのもポイントです。サイズのバリエーションが多くあるため、設置する機材や想定する作業スペースなどに最適化しながら選べるのではないかと思います。

サンワダイレクト パソコンデスク

【サンワダイレクト】モニターアーム対応/幅100×奥行60cm



汚れ対策

Mr.スーパーブース・コンパクトは、吸引口に向けて噴霧することを前提としているため、狙いを外すと周囲に塗料が飛び散ってしまうことがあります。また、そうでなくてもフィルターの目詰まりなどで吸引力が落ちていると、拡散した噴霧を吸引しきれず、周囲に舞ってしまうこともあります。汚れが気になる場合は、段ボールや紙など、汚れてもいいものを敷いて作業をしましょう。また、衝立などでガードすれば、ある程度は拡散を防げます。

ラッカー塗料の場合、吸引力の及ぶエリアの外に出てしまった噴霧は、空中を舞っている間におおよそ揮発して顔料だけになります。その場合はウェットティッシュなどで拭き取ることができますが、有機溶剤を含んだ状態(液体のままこぼすなど)で付着してしまうと、ツールクリーナーやうすめ液で拭き取る必要があります。水性塗料であれば、こういった場合でもマジックリンなどで簡単に落とせるので、机などの清掃においては負担が少ないと言えます。


フィルター交換

ほとんどの塗装ブースにはフィルターが設置されています(ネロブースのようにフィルターが不要な塗装ブースもあります)。フィルターは、ファンや排気が汚れるのを防ぐために必要ですが、徐々に目詰まりして吸引力を弱めていきます。定期的に交換する必要があるため、その手間やコストについても考慮しておいたほうがよいでしょう。

私が現在使用している「Mr.スーパーブース・コンパクト」は紙タイプのフィルター(写真右)で、交換頻度はそれなりに高いです。HG1体の塗装で言えば、サフを拭き終えて交換、ベースカラーを塗装し終えて交換、クリアコートをすれば交換といった感じで、だいたい2〜3回の交換になることが多いです。

フィルターはクレオスから専用のモノが販売されていいますが、私はレンジ用フィルターを適当な大きさにカットし、2枚重ねて使用しています。これによって、コストはほぼ考えずにフィルター交換をすることができます。スポンジタイプの分厚いフィルターは交換の頻度が少なく済みますが、交換時には購入する必要があります。

Mr.簡易塗装ブース用 交換フィルター 5枚入

【GSIクレオス】



塗装ブースの清掃

フィルターを定期的に交換していても、ある程度使っていれば、顔料がファンに付着してしまいます。これはどんなブースを使っていても同様です。あまり放置していると吸引力が徐々に弱くなっていくので、たまには掃除してあげましょう。吸引力が落ちれば噴霧は拡散してしまい、周囲の汚れの原因にもなります。

Mr.スーパーブース・コンパクトは、外枠を外し、ネジを三本外せばファンにアクセスできます。ここに付着しているのは顔料(粉)なので、歯ブラシなどで軽く擦ってやれば簡単に落ちます。

周囲のプラスチック部品やハニカムフィルターは汚れても問題はありませんが、気になるようなら買い替えてしまうのもアリです。Mr.スーパーブース・コンパクトの場合、これらが単品で販売されています。

 Mr.スーパーブース用 ペーパーフィルターカバー

【GSIクレオス】


Mr.スーパーブースコンパクト用 交換ハニカムフィルター

【GSIクレオス】商品説明


Mr.スーパーブースコンパクト用 交換フードセット

【GSIクレオス】



以上が塗装ブースの使用や選び方についてのポイントになります。設置場所や排気、清掃やフィルター交換、エアブラシとの兼ね合いなど、やはり敷居が高く感じてしまうかもしれません。しかし、エアブラシの塗装は筆塗りより圧倒的にスピーディーで簡単です。下地塗装などでは、筆塗りをする場合でも力を発揮するでしょう。家族や同居人に煙たがられないよう、また、自身の生活の邪魔にならないように塗装環境を整え、末長く模型ライフを楽しんでいきましょう!